RESEARCH
学生のいる研究室は持っていません。自分の好きなことだけをひとりで
自由に研究・調査しています。細かい実験をするのが大好きです
サンゴの移植(別頁)
サンゴの植え付けや移植で
サンゴ礁生態系を再生することはできません
今あるサンゴ礁生態系を守りましょう
辺野古だけでなく、泡瀬干潟、浦添軍港、
那覇空港新滑走路増設事業など、
さんご礁生態系が大規模に破壊される
全ての開発事業に反対します。
マイクロプラスチックは
サンゴと褐虫藻の共生を阻害する
毎日新聞(2018年7月16日)の記事
基礎研究をしている中で偶然発見した結果です。新聞で緑に光っているのはマイクロスフェア(記事では蛍光ビーズ)です。これはポリスチレンなのでプラスチックですから、我々の出している結論「マイクロプラスチックはサンゴやイソギンチャクと褐虫藻の共生を阻害する」という結論は変わりませんが、商品から取り出したマイクロプラスチックではありません。
また、現実の海でこのサイズのマイクロプラスチックがどのくらい浮遊しているのかは不明です。したがって、この実験でサンゴの餌とした、エビを飼育した海水に含まれるマイクロプラスチックの濃度が、自然の海に含まれるマイクロプラスチックの濃度と同じなのか異なるのかも不明です。
研究者としては気になるので書いておきます。
花虫綱(サンゴとイソギンチャク)で
マイクロプラスチックがエンドサイトーシスされるまでの経路を調べたら
共生藻が口から取り込まれた後の経路も
わかった(Okubo et al. 2020)
茶色い丸が共生藻(褐虫藻)です。そこに青い粒々がありますよね。これは蛍光ビーズです
(マイクロプラスチック:MP)。
共生藻とMPがサンゴの口に入ると、隔膜糸のzone of phagocytosisという場所(人間の腸にあたる組織)から取り込まれます。
その後、内胚葉の細胞にエンドサイトーシス
(食作用)されます。
下は電顕写真です。MPが細胞の中に入っているのがわかりますね。論文の拡大写真ではMPがエンドサイトーシスされた際に形成された膜に包まれていることも観察できます。
サンゴの内胚葉系細胞は、餌でも褐虫藻でも何でも取り込める大きさであればとりあえず貪食します。我々のマクロファージや樹状細胞の祖先なのかもしれません。Okubo et al. 2007にも書きましたが、サンゴにも2種類の免疫細胞がいます。イソギンチャクには、アメーボサイトという免疫細胞の役割を持つ細胞もいるのですよ。
論文はこちら🌀
移植したサンゴの配偶子形成と産卵
サンゴはどうやって自分のサイズを知るのでしょう?これはまだわかっていません。でも、何かストレスを受けた時期や、ストレスを受けた時の自分のサイズによって、卵を育てたり、吸収したり、色々と戦術を変えるのです(Okubo et al. 2005, 2008, 2009)。時間ができたら数理モデルの方や、遺伝子発現の方と絡めて、またこの研究を続けたいと思います。
Romano and Palumbi (1996)は、分子系統学的結果から、イシサンゴ目が2つのグループに分かれることを発見しました。
その後、分類学者や系統学者が、この2つのグループに相当する分類形質をずっと探していましたが、なかなか見つかりませんでした。
そんな時、全く別の観点から、サンゴの発生を研究していた私は、サンゴの発生様式が2つに分かれること、その2つのグループがRomano & Palumbi (1996)が見つけた2つのグループ(現在、2つの単系統性はほぼ証明されている+現在ではBasalというもうひとつの祖先的なクレードも有り)に相当することを偶然に発見しました。
そこで、発生を分類形質として、2つの新亜目を提唱しました(Okubo 2016)。
胞胚腔が無く、Complexクレードに属するサンゴをSuborder Refertina(シズカテマリ亜目)、胞胚腔が有り、Robustクレードに属するサンゴをSuborder Vacatina(ナミフウセン亜目)としました。
ただ、Suborder Refertinaに属するサンゴで胞胚腔がある例外のサンゴがひとつだけ見つかっているので、もしかするとRefertinaは幾つかのSuborderに分けられると私は考えています。
今まで、サンゴは骨の形態だけで分類されてきました。でも、これからは、無理やり骨の形だけで分類するのではなく、発生を含めた他の様々な形態も使って分類するのが良いと思います。この論文では、そのように提案しました。
下図では側系統ですが現在は二つとも単系統とされている
サンゴの発生の多様性
イシサンゴ目の発生は、まず初めに『胞胚腔の有無』によって2つのタイプに分かれます(Okubo et al. 2013)。これに関しては、生物科学「サンゴの生物学」を読むとよくわかります(PDFのみ販売中)。
① 胞胚腔がないタイプ
卵割が進むにつれて、えびせんみたいな形の胚になり、それがだんだん丸くなるときに二胚葉が出来上がります。原口のみられた動物極が口になりますが、口は二胚葉が出来た後、陥入によって生じます。
② 胞胚腔があるタイプ
胚の中が空洞です。卵割が進むにつれて、中に空洞が出来てきます。動物極から陥入が起こり、原腸形成が行われて、二胚葉が出来上がります。イソギンチャクと同じタイプです。
サンゴの原腸形成
サンゴの原腸形成がいつかわからなかったので、brachyuryなど原腸形成で指標となるような遺伝子の発現をサンゴで調べました。なぜかというと、サンゴには2つの発生様式があり、外見は全く同じように発生するのに、中に胞胚腔が作られたり作られなかったりして、いったい何時が原腸形成なのかわからなかったからです。私はこれが気になって、オーストラリアにまで留学してしまいました。
当時は時代の最先端だった次世代シーケンサーを使って、transcriptome解析したのですが、何年も後に論文化したので、サンゴや刺胞動物に興味がある人以外にはインパクトはないと思われます
Okubo, Hayward, Foret, Ball, BMC Evolutionary Biology 2016